医食同源としての薬

『植物はなぜ薬を作るのか』(斉藤和季著/文春新書) という本によると、人類が植物を薬として用いたのは、紀元前4000~3000年頃に遡るそうです。薬となる植物の発見は、偶然の所産(セレンディピティー)によるもの。たくさんの植物をかじったり食べたりする試行錯誤のうちに、偶然に薬効のある植物を探し当て、その知識が伝承として語り継がれてきました。

植物などの天然物を精製(たくさんの物質が混ざった混合成分から単一の成分だけを取り出す作業)せずに、そのまま用いたものが「生薬」。この生薬から単一の薬理成分を取り出したものが、近代的な西洋医学による医薬品に発展していきました。つまり、ふだん私たちが薬局で買ったり処方してもらう薬も、もとは植物、動物、鉱物などの自然物から発見されました。

漢方薬も最近はエキス剤が多く見られますが、本来は草木を乾燥させた生薬をことこと煎じて服用するもの。一種類の生薬だけを使うことはまれで、多くは数種類の生薬を混ぜ、さらに患者を診てその体質や自然治癒力、生体機能のバランスをみながら処方されるというように、根本には東洋医学的な全体システム主義の考え方があります。

また、中国最古の薬物書といわれ、現代まで伝えられる『神農本草経』では、365種類の生薬を「上品(じょうほん)」「中品(ちゅうほん)」「下品(げほん)」の三つに分類。もっとも位の高い「上品」は無毒で強い作用がなく毎日長く飲み続けてよい養命薬、「中品」は使い方しだいで無毒にも有毒にもなるもの、「下品」は副作用があるため(有毒)長期間服用してはならず、病気になったときに使うもの、としています。現代薬の多くを占める治療薬はこの「下品」に相当すると著者はいいます。その基本は、「人間の身体、健康は食べたもので作られる」という医食同源の考え方です。

毎日食べるものや飲むものは多岐にわたり、長く摂取し続けることによりじわじわと薬効が現れてくるので、なかなかその効果を実感しにくいもの。そのためにあまり省みられず嗜好に偏りがちで、いざ病気になったときに強い治療薬を服用する、というパターンが多いのではないでしょうか。でも、毎日食べたり飲んだりするものに気をつけていれば、強い作用のある「下品」の薬を服用しなければならない確率を小さくできるのではないか…と思うのです。

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